ORB+VWAPで278回トレードして−175,389円。損失の73%は「寄り付き45分」で生まれていた

寄り付き直後の45分間だけで11万3,200円負けた週があります。使っていたのは、ORB(オープニングレンジブレイク)とVWAPを組み合わせた、教科書どおりの順張り戦略でした。

この記事は、その戦略を自作の自動売買システム(ペーパートレード=仮想資金での売買シミュレーション)に実装し、30営業日・278回の決済を重ねて累計−175,389円になった検証記録です。教科書は「ORBは寄り付きの勢いに乗るシンプルで有効な手法」と教えてくれますが、実際に動かして分かったのは、落とし穴は教科書に載っていない場所にあるということでした。

数字はすべて、システムのデータベースに残っている実データです。負けた記録をそのまま出します。

保有時間1分、損失14,908円 — 最悪の1トレードから始めます

2026年7月3日、9時42分40秒。私のシステムはソニーグループを3,475円で100株買いました。ORの上抜け、VWAPより上、市場フィルターも通過。ルール上は完璧なエントリーです。

72秒後の9時43分52秒、損切りが発動して3,330円で決済。保有時間1分、損失14,908円。これが278回の中の最大の負けトレードです。

このトレードで学んだことは2つあります。1つ目は、ブレイクへの飛び乗りは「局所的な天井を高値掴みする行為」と紙一重だということ。2つ目は、損切りラインを3,441円に置いていたのに、実際の約定は3,330円だったこと。急落で板が飛ぶと、損切り注文があっても想定の4倍以上滑ります。「損切りを入れているから最大損失は限定される」というのは、平時にしか成り立たない前提でした。

ちなみにワースト2位は7月7日9時17分のセブン&アイ・ロング(20分保有で−12,595円)、3位は7月15日9時24分の日本特殊陶業・ロング(12分保有で−11,479円)。ワースト3はすべて、寄り付き45分以内に建てたロングです。これは偶然ではないことが、後の集計で分かります。

なぜこんなトレードが生まれたのか。それを話すには、このルールがどう作られたかから始める必要があります。

11営業日「一度も売買しないシステム」が、ORB+VWAPになるまで

刷新前の私のシステムは、8つのテクニカル指標を平均してスコア化し、65点以上で買い・35点以下で売りという設計でした。結果は、指標同士が打ち消し合ってスコアが50付近に張り付き、11営業日連続でエントリー数ゼロ。何も判断しない「無発火システム」の完成です。

そこで2026年7月1日、方針を「順張りのみ。逆張りは廃止。ロジックが多すぎると負ける」と決め、エントリー条件を次の3つだけに絞り込みました。8指標平均もトレンドスコアもADXも、判定からすべて外しています。なお旧ロジックには環境変数1つで即座に戻せるようにしてあり、新戦略が想定外の壊れ方をしたときの保険も用意しました。ロジックを捨てるときも、検証可能な形で捨てる——これは後で効いてきます。

  1. ORブレイク: 寄り付きから9時15分までの高値・安値で作った「箱」を、株価が明確に抜けること。上抜けなら買い、下抜けなら空売り
  2. VWAP整合: ブレイクの方向と、株価のVWAPに対する位置が一致していること
  3. 市場ゲート: 監視銘柄全体のうちVWAPより上にある銘柄の割合(ブレッドス)が、エントリー方向と矛盾していないこと

ORB(オープニングレンジブレイク)の考え方はシンプルです。寄り付き直後の15分間は、前夜に溜まった買いと売りの注文がぶつかり合う時間帯で、そこでできた高値・安値は「その日の最初の勢力図」を表します。その箱を抜けた方向にはトレンドが出やすい——という順張りの古典です。

VWAPは出来高加重平均価格、平たく言えば「その日、実際に売買された株の平均取得単価」です。株価がVWAPより上なら買い方の平均は含み益で買い方優勢、下なら売り方優勢。機関投資家の多くが執行基準に使うため、その日の需給の優劣を1本の線で示してくれます。ORB単体の最大の弱点である「ダマシ」(一瞬抜けてすぐ箱に戻る動き)を、このVWAPでふるいにかけるのが組み合わせの狙いです。

条件を3つに絞ったことでエントリーは1日20回前後発生するようになり、無発火からは完全に脱却しました。刷新前の1分足バックテスト(6営業日分)では、勝率52%・1回あたり平均+0.09%・買い売り両方向でプラス。数字の上では、勝てるはずの戦略でした。

実装ルール全公開 — 損切り−2%、利確3段階、15時20分に全決済

リアルタイム検証で実際に動かしているルールを公開します。仮想資金300万円を起点に、損益を翌日へ持ち越す複利方式です。

銘柄選定
– 毎朝、東証全市場・約4,400銘柄をスクリーニングし、流動性・ボラティリティ・モメンタムの複合スコアで40銘柄に絞る
– 場中も約5分ごとに急動意銘柄をスキャンし、最大50銘柄まで監視に追加

約定の再現
– 約定は現実の板情報(気配値)ベースでシミュレーション。買いは売り気配にぶつける形で成立させ、さらに片道0.06%のスリッページを上乗せ。新鮮な板が取れなければエントリー自体を拒否

ポジションサイズと出口
– サイズは直近の勝率・損益率から算出するハーフケリー基準(上限あり)。1日の損失が資金の−3%に達したら全ポジション強制決済
– 損切りは「−2.0%」と「ATR(平均的な値幅)の1.5倍」の狭いほう。損切りラインは狭める方向にしか動かさない
– 含み益+1%で損切りラインを建値+0.2%へ自動で引き上げ。利確は+2%/+3%/+5%の3段階+トレーリングストップ
– 15時20分に全ポジション強制決済。オーバーナイトのリスクは持たない
– 損切り直後の同一銘柄への再エントリーは45分間禁止。連敗時は全体をクールダウン

ここまで読むと、リスク管理はそれなりに固めてあるように見えると思います。私もそう思っていました。しかし本番検証の第1週、バックテストの期待値は3日で吹き飛びました。

本番3日間で−163,573円。勝率16.7%の中身を分解する

7月7日−55,759円(22往復・7勝)、8日−65,619円(25往復・3勝)、9日−42,195円(19往復・1勝)。3日間合計−163,573円、勝率16.7%(66回中11勝)です。この3日間の全トレードを分解して、損失の正体を3つ特定しました。

1. 損失の69%は寄り付き45分に集中していた。 9時15分〜9時59分のエントリー27本だけで−113,200円(3勝24敗)。冒頭に書いた「45分で11万円」はこれです。市場ゲートは用意していたのに、判定材料のVWAPブレッドスは寄り直後はデータ不足で遅行し、「中立」のまま素通りしていました。フィルターを作ることと、フィルターが必要な瞬間に効くことは、別問題でした。

2. 「即逆行」24本で−112,216円。 エントリー後、一度も0.1%すら順行しないまま逆行したトレードが24本。つまりブレイクに飛び乗った瞬間が、そのまま局所的な天井・底だったということです。ソニーの1分損切りは氷山の一角でした。

3. コストが損失の25%を占めた。 手数料・スリッページ相当のコストは3日間で−40,243円。1日20往復する戦略は、1回あたりのわずかなコストが期待値をそのまま食いつぶします。

日ごとに負け方が違ったのも印象的でした。7日は日経平均−2.1%の急落日に朝イチの「上へのブレイク」を買い続け、ロング10本だけで−62,562円(同日のショート12本は+6,803円で唯一のプラス)。8日は方向としては正解だったショートが、朝の+1%超のリバウンドで全部ストップにかかり、午後に入れ直したロングが引けの崩れを直撃。9日はギャップアップ後の押しでロングが即死し、切り返しでショートも死ぬ往復ビンタでした。3日とも「窓を開けて寄って、日中に反転する」地合いで、15分ORBの順張りには構造的に最悪の相場が続いたことになります。

さらに前段には資金管理の罠もありました。7月6日にたった1本の大勝ち(+24,556円)が出たことで、ケリー基準の計算値が0.02から0.101へ約5倍に膨張。翌7日の平均建玉は前日比79%増になり、いちばん張っていた日に、いちばん悪い相場が来ました。勝率ベースのサイジングは、直近の好成績を未来に外挿してしまう性質があります。

ここまで負けると、検証したくなることが1つあります。「もし全部、逆をやっていたら?」

全トレードを逆にしたら+74,507円 — それでも逆張りに切り替えない理由

3日間の全66トレードを、同じ銘柄・同じタイミング・同じストップ幅で反対方向に建てたと仮定して1分足で再計算しました。結果は−163,573円が+74,507円に反転。勝率は17%から50%になり、負け55本のうち33本が勝ちに変わりました。寄り付き45分帯に限れば−113,200円が+82,340円です。

これだけ見ると「逆張りが正解」に見えます。しかし期間を広げて6営業日・112本で同じ検証をすると、話が変わりました。合計では実績−160,886円に対して逆張り+76,234円と、依然として逆張り優位に見えます。ところが日別に割ると、日経平均が日中+1.56%と素直に上げたトレンド日(7月3日)は、実績+2,728円に対して逆張りは−16,162円。順張りが正解の日も、ちゃんとあったのです。逆張りが勝つのは「窓を開けて寄り付き、日中に反転する」タイプの日に集中していて、たまたまこの週は6日中4日がその地合いでした。

つまり本当に欠けていたのは、順張りか逆張りかの二択ではなく、「今日はどちらのタイプの日か」を判定するレジーム認識でした。単純にロジックを反転させるのは、次のトレンド相場で同じ授業料を逆側から払うだけです。

ついでに「損切り幅が狭すぎるのでは」という仮説も検証しました。ストップを1.0%に広げるとシミュレーション上は微改善しますが、1.5%・2.0%ではむしろ悪化。負け55本のうちストップ拡大で勝ちに転じたのは10本だけでした(方向反転なら33本)。方向が逆のトレードに余地を与えても、損が増えるだけです。

では、この3日間は特別に不運だったのでしょうか。通算データを見ると、そうではありませんでした。

通算278回の時間帯別集計 — 負けは毎日、同じ場所で生まれていた

システム稼働以来の全決済278回(84勝194敗、勝率30.2%)を、エントリー時間帯別に集計した実データです。

エントリー時間帯 回数 勝率 損益
9:15〜9:59 116回 25.0% −128,278円
10:00〜10:59 46回 32.6% +10,790円
11:00〜前場引け 15回 40.0% +5,516円
12:30〜13:29 59回 32.2% −52,798円
13:30以降 42回 35.7% −10,619円

累計損失175,389円に対して、寄り付き45分帯だけで−128,278円。損失の73%が、毎日同じ時間帯で発生していました。一方で10時〜11時台はトータルプラス。「寄り付きの勢いに乗る」はずのORBが、実データでは寄り付きにいちばん殺され、朝の混乱が落ち着いた時間帯にいちばん機能していたことになります。

もう1つ、重いのがコストです。コスト控除前のグロス損益は−53,920円ですが、手数料・スリッページ・金利相当のコストが累計121,469円乗って、最終損益は−175,389円。損失の3分の2以上はコストでした。回転数の多い戦略は、戦略そのものより先にコストと戦うことになります。

保有時間のデータも示唆的でした。勝ちトレードの平均保有は182分、負けは109分。通算最大の勝ちトレード(東京電力HDのショート、+66,220円)も243分保有した末の利確です。伸びるトレードは時間をかけて伸び、ダメなトレードは早く死ぬ。損小利大の形自体は、ルールどおりに機能していました。ちなみに「120分膠着したら決済」というタイムストップで手仕舞った18本は合計−9,209円。動かないトレードは、待っている間のコストでじわじわ負けるということも数字で確認できました。

ここまで、負けの数字ばかり並べてきました。それでも私はこの戦略を捨てていません。最後にその理由を書きます。

それでも順張りORB+VWAPを使い続ける3つの理由

1. 損切りが機械的に実行されるから、最悪の日でも生き残れる。 278回の最大損失は、あのソニーの−14,908円です。裁量トレードなら「戻るはず」と塩漬けにしたり、ナンピンで傷を広げたりして、1回の判断ミスが退場につながり得ます。私のシステムは30営業日負け続けてなお、300万円の仮想資金に対して−5.8%。負け方をコントロールできていること自体が、機械的ルールの成果だと考えています。

2. ルールが明文だから、敗因を数字で特定できる。 「寄り45分で73%」「即逆行24本」「コスト25%」——この記事の分解がすべて可能なのは、全トレードが同じルールで打たれ、記録されているからです。裁量の「なんとなく負けた」には、改善の足場がありません。負けが仮説に変わるのは、再現性のあるルールで負けたときだけです。

3. 仮説をデータで棄却できる。 「逆張りにすべきか」→ トレンド日に負けるので不採用。「ストップを広げるべきか」→ 55本中10本しか救えないので不採用。感想や相場観ではなく、検証で意思決定できる。これが順張りORB+VWAPという「検証可能な土台」を維持している最大の理由です。

実際、分析のたびに対策はルールへ還元しています。急落日の初日の分析からは「指数ギャップによる逆風方向の制限」「ケリー計算から外れ値の大勝ちを除外」「直近20トレードの勝率が35%を割ったらサイズ半減」「同一銘柄クールダウンの15分→45分延長」を実装しました。3日間の分析からは、寄り付き45分の新規エントリー制限やレジーム判定の追加を、同じ土台の上で検証しています。ルールは固定するものではなく、負けデータで更新し続けるものだと考えています。

−175,389円は、ペーパートレードだからこそ払えた授業料です。もしこれが実資金で、しかもルールなしの裁量だったら、損失はこの額では済まず、原因の特定すらできなかったはずです。

まとめ

  • ORBは「寄り付き15分の箱のブレイクに乗る」順張り手法、VWAPは「その日の平均取得単価」で需給を測る指標。組み合わせでダマシを減らす
  • 278回の実データでは、損失の73%が寄り付き45分帯に集中。フィルターは「必要な瞬間に効くか」までが設計
  • 全トレード反転で+74,507円になるが、トレンド日には順張りが正解。欠けているのは方向ではなくレジーム判定
  • コストは累計12.1万円で損失の主因。回転数の多い戦略はまずコストと戦う
  • それでも続ける理由は、機械的損切り・敗因を特定できる再現性・仮説をデータで棄却できる検証可能性の3つ

同じようにシステムトレードを検証している方、これから始める方の参考になれば嬉しいです。負けたデータこそ、いちばん役に立つと信じて公開しました。


免責事項: 本記事は筆者個人のペーパートレード(仮想資金によるシミュレーション売買)の検証記録であり、実資金の運用実績ではありません。特定の銘柄・手法への投資を推奨するものではなく、投資助言を行うものでもありません。株式投資には元本割れのリスクがあります。投資の最終判断は、ご自身の責任において行ってください。

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本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。掲載している株価・指標等のデータは記事作成時点のものであり、その正確性・完全性を保証するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。詳しくは免責事項をご覧ください。

出典: 株価・指標データは Yahoo!ファイナンス、J-Quants API、日本取引所グループ公表資料等を基に作成しています。記事中の「仮想トレード」は実際の資金を用いないペーパートレード(検証記録)です。

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